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音を可視化してシンセを学んでみる

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シンセっていろんな音を作り出せてもの凄い便利な反面、パラメーターとかいっぱいあって慣れないうちはかなりわけわからん機材の筆頭だと思います。
僕も基本的にはプリセットから調整していく感じで使うことが多いので、イチから音を作るということはあまりしません。

でもせっかくいろんな音を作り出せるわけですから、シンセの仕組みを理解しておくに越したことはありません。
そんなわけで、自分的な復習も兼ねていろいろ試してみようというのが今回の企画です。

シンセの種類

シンセっていってパッと思いつくのはやはりアナログシンセに代表されるツマミいっぱい付いたあのスタイルではないでしょうか。
シンセにもいろんな種類がありますが、アナログシンセやプラグインなどでも最も多く採用されているのが「減算方式」というタイプ。
またの名を「サブトラクティブシンセ」なんて言います。
げんざん?さぶとらくてぃぶ?とかいう言葉で既にクラっと来てしまいそうですが、要は引き算で音を作るタイプということですね。
他に有名どころなのは足し算で作る「加算方式(アディティブシンセ)」、周波数を変調させて作る「FMシンセ」、波形をバラバラにしてゴニョゴニョ再構成して作る「グラニュラーシンセ」などがあります。

いろいろ方式はありますが、最も代表的かつ基本的なのは「減算方式」であるサブトラクティブシンセです。
様々な方式はあるものの、「波形(ネタ)」に何かをゴニョゴニョすることで音を変化させるっていう部分においてはみんな同じです。
要するにゴニョゴニョのしかたが色々あって、そこでそのシンセのキャラに色がつくということですね。

音を可視化する

波形を何かゴニョゴニョするのであれば、元になる波形が見えた方が変化がわかりやすいので、可視化しましょう。
音の見え方が違う2つの可視化グッズ、オシロスコープとスペクトラムアナライザーを使用します。

オシロスコープ

オシロスコープというのは、まさに音の波形を見るもので、DAWなどのオーディオトラックに出てくる波形はまさにオシロスコープで見える波形そのものです。
つまり、鳴らした音をオーディオ化して、その波形を拡大表示させても良いのですが、面倒なのでリアルタイムで見れるようオシロスコープを使います。
・・・いやいや、そんなもん持ってないし。
と思いきや、今時のDAWはもともと付属しているものもありますし、フリーのプラグインもありますのでご安心を。


Cubase multiscope

Cubaseユーザーは「Multi Scope」というプラグインが付属してます。Logicには残念ながら付属では無いみたいですが、MeldaProductionというデベロッパーが「MOscilloscope」というのを無料で配布していますので利用してみてください。

無料のオシロスコーププラグインMELDA PRODUCTION
無料のオシロスコーププラグイン


Oscilloscope

今回はStudioOne3の「Scope」を使用します。
見方はいたって簡単で、横軸が時間軸、縦軸が中心線をまたいでの上下幅が音量になります。
鳴らすと右から左にその音の波形が流れていきます。
音が大きいほど上下のブレが大きくなり、音が高いほど波形の幅(上がって下がっての周期)が小さくなります。
こうやって可視化すると、音とは振幅なのだなと改めて感じることができますねw

スペクトラムアナライザ


Speana

次はおなじみスペクトラムアナライザ、俗にいうスペアナです。
近頃はDAWに付いているEQにもこのスペアナ機能が備わっていたりします。
スペアナは大抵のDAWに何かしらの形で付いていると思いますが、有名なフリープラグインでvoxengoの「SPAN」というのがありますのでそちらを使ってもいいと思います。

無料のスペアナプラグインVoxengo SPAN
無料のスペアナプラグイン

ここではとりあえず今回はStudioOne3に付いてる「Spectrum Meter」を使用します。
これの見方は大体わかると思いますが、縦軸が音量レベル、横軸が周波数です。
先ほどのオシロスコープが波の形を可視化するのに対して、スペアナは各帯域に含まれる音の成分を可視化します。

ネタとなる基本波形を「見る」

準備が整ったところで、シンセの最も基本となるネタ(波形)を目で見てみましょう。
ちなみに、アナログシンセやそれをシミュレートしているプラグインなどでは、この「ネタ」を生み出す部分を「オシレーター」と言います。
日本語にすると「発振器」といい、波形を生成します。ガチのアナログ機材は実際に回路を発振させることで音を鳴らします。
だいたいどのシンセにも必ずあるのが「正弦波(せいげんは、sin)」「矩形波(くけいは、square)または方形波(ほうけいは)」「三角波(さんかくは、triangle)」「ノコギリ波(のこぎりは、sawtooth)または鋸歯状波(きょしじょうは)」と「ノイズ」です。
パルス波(pulse)というのもありますが、アレは矩形波の波の幅が違うパターンで基本的には矩形波や方形波と同じものと思っていいです。

では順番に見ていきましょう。
ちなみに、今回はSylenth1というシンセプラグインを使っていきます。

正弦波


Wave sine

サイン波と言われるヤツですね。
時報の3秒前から鳴る「ポ、ポ、ポ、プー」のアレですね。
音には基音の他に倍音という成分があり、それによって単なる振動にキャラが生まれるわけですが、このサイン波には基音しかありません。
上図左側のスペアナを見ると柱が1本しか無いのがわかると思います。
この倍音成分を含まないピュアな音って実は自然界には存在しない音だそうです。

矩形波


Wave pulse1

方形波やパルス波ともいわれるヤツです。
この波形で特徴的にわかりやすいのはあのファミコンのピコピコ音ですね。
いわゆるチップチューンでメインに使われる波形です。
Sylenth1には幅の違いで3種類の波形が入っています。
上に張っているのが「Pulse」


Wave pulse2

こちらが「Half-Pulse」


Wave pulse3

そしてこれが「Quater-Pulse」

スペアナを見ると先ほどのサイン波と違ってギザギザが右側にいっぱい出てますね。
これがいわゆる倍音と言われる部分です。
倍音が多く含まれるほど、豊かな音になる反面、音を重ねた時にぶつかって濁りやすくもなります。

三角波


Wave triangle

矩形波がかなり複雑なギザギザだったのに対して、なんかかなり綺麗に並んでる感じですよね。
サイン波に倍音成分を足した感じでしょうか。
音もサイン波を少し硬くした感じの印象を受けます。
どうやら基音と奇数倍音だけを含むのだそうです。

ノコギリ波


Wave sawtooth

おそらく最も使用頻度が高いであろう基本波形。
トランスなんかでよく使われるアノ音ですね。
いわゆるシンセ音といえば真っ先に思い浮かべる音のイメージがおそらくこのノコギリ波をベースにした音じゃないでしょうか。
あと波形的にはストリングスやブラス楽器に近くて、普段から聴き馴染みが深いゆえに使いやすいのかも知れません。
見た目はまさにノコギリの刃のような形をしていますね。

ノイズ


Wave noise

そして最後にノイズ。
なんでノイズなんてわざわざ搭載するのかと思うかも知れませんが、意外とノイズって重要な音なんですよね。
打楽器系、中でもスネアのあのパシャんっていう音はノイズが無いと逆に作れませんし、シンバル系とかもそうですよね。
波形は見ての通りカオスです。
このランダムな波形を合成して組み合わせすることで、様々な味付けができるわけですね。

シンセの仕組み

オシレーター

減算方式のシンセ(にかかわらずですが)は大きく3つの機能で音を合成します。
1つは先ほどの波形を作る「オシレーター」。VCO(ボルテージコントロールドオシレーター)のことで、本来はアナログ回路を電圧で発振させる仕組みのことを言います。
プラグインではその発振する仕組みをシミュレートして波形を発生させます。
シンセで発生させる波形の種類は上記の基本形の他、シンセによって様々なものが用意されていたり、最近では自分で波形データを用意して読み込ませて使えるものもあります。
つまり、オシレーターとは総じて「音を発生させる部分」ということですね。

フィルタ

2つめが「フィルタ」と言われる部分。正確にはVCF(ボルテージコントロールドフィルタ)の略ですかね。
フィルタという名前の通り、オシレータで発生した音を減算方式のシンセではこのフィルタ部分で「引き算」します。
何を引くのか。それはシンセの種類にもよりますが、たいてい付いているのはHPF(ハイパスフィルタ)、LPF(ローパスフィルタ)、BPF(バンドパスフィルタ)などです。
読んで字のごとくですが、HPFは「ハイをパスする」ということで高音を通します。
逆に言うと「低音を引く」ということですね。
LPFはその逆で、「ローをパスする」、つまり高音を引いて低音を通すフィルタです。
バンドパスフィルタ(BPF)は低音と高音を引いて、中域のみを通すものになります。

パラメーターは基本的に「カットオフ」と「レゾナンス」がメインとなります。
カットオフというのはどの周波数までカットするかを決めるノブで、フィルタの種類によって動作が異なります。
レゾナンスは、カットオフで指定した周波数の部分のみを持ち上げて特徴的な音にします。
イコライザでいうところのQの動作がレゾナンスのそれと近いです。

よくフィルタを閉じたり開いたりという表現が出てきますが、閉じるというのは聴こえる周波数帯を少なくすること、開くは多くすること。
多くの場合ではツマミは共通になっていて、フィルタタイプを選択する仕組みになっており、ツマミは左に回せば低い周波数(低域)、右に回すほど周波数が大きく(高域)なり、タイプによって削る音が変わります。

アンプ

最後のセクションが「アンプ」です。VCA(ボルテージコントロールドアンプ)ですね。
アンプは一般にも馴染み深いと思います。いわゆるオーディオ機器のアンプと基本的には同じで、音量を制御する部分です。
普通のオーディオアンプと異なるのは、よくADSRと言われるいわゆる「エンベロープ」機能を持つことでしょうか。
ADSRは調べればいくらでも詳しい情報が出てきますので、ここではさくっと行きます。
AはアタックのA、音の最大音量までの時間。遅くすればPad的な感じになります。
DはディケイのD、最大音量から次のサステインでの音量までの時間。
SはサステインのS、鍵盤を押している間継続して鳴る音の大きさ。
RはリリースのR、鍵盤を話してから音が消えるまでの時間。
大事なのはSのサステインのみ音量レベルで、他は時間であるということです。

このADSRの設定によって、鍵盤を押して離した時の「音の鳴り方」を指定し、音色のキャラを作ります。
ポイントはやはりサステインで、鍵盤を押している限り鳴り続けるかどうかが音色に大きく影響します。
よく言われる例えとしては、ピアノやギターなどは弦を弾いたり叩いたりして音を鳴らす楽器なので、永遠に鳴り続けるということはありえませんよね。
つまりサステインレベルは0のはずです。打楽器なんかはそれの代表格ですね。
一方、バイオリンやオルガンの場合、ずっと鳴らし続けることができます。
その場合はサステインレベルが必要になります。

逆に言えば、鳴り続けるピアノや、減衰するオルガンなんていう音もシンセなら作れるということですね。
もはやそれはピアノやオルガンではなくなりますけどw

LFOとモジュレーション

シンセには上で話した3つのセクションが基本中の基本で、それだけでシンセサイザーとしては成立しますが、流石に音作りの幅が狭いですよね。
例えば、ビブラートをかけたいとか、最初は暗いけどだんだん明るくなるPadにしたいとか、いわゆる動的変化っていうんですかね、そういう機能欲しいじゃないですか。
それを可能にしているのが、LFO(ローフリケンシーオシレーター)とモジュレーションエンベロープですね。
これも大体のシンセには搭載されてまして、それぞれひとつづつ行きましょう。

LFO

LFO(ローフリケンシーオシレーター)ってなんやねんってことですが、要は最初に出てきたオシレータと同じです。
ただ、周波数がものすごく低いので音としては聴こえません。
じゃあ何のために存在するのかというと、上でさらっと流しましたが、オシレーターで発生する波形は高い音ほど波の周期が早くて、低いほど遅いんですね。
それを逆手にとって、聴こえないくらい低い音の場合、その波形の周期もかなり遅くなります。
まさにスローモーションのような感じです。
そのスローモーションな波形の周期の変化で別の何かを動かせると便利じゃね?っていうのがLFOです。
元が普通に周期を持つ波形なので、ビブラートやトレモロのような揺れの効果を持たせることができます。
んでもって、この波の動きをVCFに繋げばフィルターを制御できるし、VCAに繋げば音量を制御できるという仕組みです。
あれ?これもオシレーターだからVCOには繋げられないのか?
いえいえ、大丈夫です。VCOに繋げば音程を変化させることができます。
ギターでいうチョーキングでのビブラートですね。

こういう、何かで何かを変化させることを一般的に「モジュレーション」といいます。
「何かで何かを」を具体的に言えば、変化させるための素材を「モジュレーションソース」、変化させる先を「デスティネーション」と呼び、たとえばLFOはモジュレーションソース、VCAやVCF(変化させる側)をデスティネーションと言います。
つまり、「モジュレーションソースでデスティネーションを」モジュレート(変化)するということになりますね。

エンベロープ

そしてもう一つ、LFOが周期的な変化が得意なのに対して、エンベロープはVCAでも出てきましたが周期的ではない変化を作ることができます。
アンプ部についているエンベロープは音量変化に対して機能しますが、そんな便利なもん他でも使いたいよと思いますよね。
なのでモジュレーションソースとして単独で用意されているのがモジュレーション用のエンベロープです。
これもLFO同様、どのセクション(デスティネーション)にもかけることが可能です。

レッツシンセシス!なので

シンセの仕組みに関するおさらいを終えたところで、いよいよシンセシス(合成)してみましょう。
合成と聞いてまず思いつくのは波形の違うもの同士を合体させるとどうなるのかです。
シンセプラグインにはオシレーターを複数搭載しているものが多いです。
2つの異なる波形を組み合わせてより複雑な波形を作ることができるわけですね。
今回使用しているSylenth1にも1つのパートに2基のオシレーターが内蔵されています。
(それが2パート分あってさらに合成出来る仕組みになっています)

ここでざっくりSylenth1のインターフェイスを先ほどのシンセの仕組みに沿って見てみましょう。


Sylenth1overview

①の部分がVCOにあたる部分、②がVCF、③がVCAに該当する部分ですね。
④がLFO&エンベロープなどのモジュレーターセクション。
非常にシンプルで使いやすい配置になっています。

そして⑤の部分には各種エフェクターやアルペジエイターなどの付加機能が搭載されています。

それでは無味無臭系サイン波さんにいろいろ混ぜてみましょうか。
ちなみに◯×◯という表記になってますがカップリングのことではありませんのであしからず。

正弦波×三角波


Sintriangle

ほうほう。これだけ見るとわかりにくいですが、サイン波さんの丸みを帯びたラインの先っちょが尖ってますねw
サイン波さんの柔らかい物腰に三角波さんのキリッとした先っぽがうまく融合されています。
音的にもサイン波さんの眠たい感じからピリッとスパイスが効いた感じに変化しました。

正弦波×ノコギリ波


Sinsaw

なるほど、こちらは逆にノコギリ波さんのなんでも切り刻むぜ?っていう決死の覚悟をサイン波さんの優しい丸みで諌めたような形に変化しましたね。
音的にもノコギリ波さんの主張的な音にサイン波さんが大らかに包み込んだようなそんな音になっています。
捉えようによってはナマクラ化したノコギリと言えなくもないですが、大人の包容力を持ちつつ主張を続ける出来るビジネスマンのような音ともいえます。

正弦波×矩形波


Sinpulse

もう、これはやんちゃですね。
ただでさえやんちゃな矩形波さんにサイン波さんを合わせると、人が踏み込んだトランポリンを横から見たような波形になりました。
まさに矩形波さんの台の上にサイン波さんが乗っかってへっこんだ、そんな感じです。
音はもうやんちゃのひと言ですね。うーん、やんちゃ。

正弦波×パルス波①


Sinpulse2

おっと、これは葛飾北斎もビックリの荒ぶる海のような形になりましたね。
まあ元が矩形波なので、音はやんちゃ系ですが、波形の変化とは裏腹に音としてはあまりサイン波さんの影を感じません。
サイン波さんが完全に飲み込まれてしまったようです。

正弦波×パルス波②


Sinpulse3

今度は打って変わってひよこまんじゅうが並び出しましたね。
こちらはやんちゃだったパルス波さんを逆にサイン波さんがマウントして制圧した感じです。
音的にも、やんちゃさは少し影を潜め、サイン波さんのピュアな心が顕現した、そんな感じの音になりました。

正弦波×ノイズ


Sinnoise

魔界の王ことノイズさんに完全なる精神汚染をうけてしまいました。
興味深いのは、あくまでサイン波さんの波形自体は残っているのですが、完全に乗っ取られて傀儡化してしまっています。
根がピュアなだけに精神攻撃には耐性がなかったのでしょう。

シンセっておもしろい

今回は、基本的な波形の組み合わせをいろいろ見てきました。
いやぁ、シンセって面白いですね。
波形の合成って、操作としては単にパラメーター弄くって鳴らしているにすぎないわけですが、そもそも「音」というもの自体が持つ波形が合成されることで、聞こえてくるサウンドが変わることはもとより、本当に合成された波形になるんですね。
つーかこの辺は完全に理系の分野の話しですよね。
シンセサイザーという機材が音楽という芸術だけではなく、科学的側面での研究対象になるのも頷けます。

次回(があれば)は他のセクションもいじりながら時間的変化部分も見ていきたいと思います。

それでは〜。

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